91歳の父が1人暮らしをしている実家へ帰ったときのお話。
どういう話の流れか、スキーの話題になった。
父は勤めていた会社の登山部やスキー部に所属していたことがある。
私と妹も、子供のときスキーに連れていってもらったりしたものだ。
母とはどんなことでも話したが、父は男だし、もとが無口だからなかなか盛り上がる話題が少ない。山やスキーの話は数少ない、盛り上がりキーワードである。
「○○ちゃんと山形蔵王に行ったんだけど」
最近滑舌の悪くなった父が話し始めた。
「〇〇ちゃん」とは、私も昔から何度もお名前を聞いたことがある方で、父の同僚で同世代の男性だ。山とスキーの仲間だろう。
「山形から宮城に抜けようとしたら、吹雪いていて、どうしようかとなったけど、やめたの」
と父。もともと感情が表面に出ない方なので、淡々とした口調だ。
「そうだったんだ…」と私は相槌をうつ。
父「行った人もいたの。イギリス人2人で、記者だった。遭難して…」
私「えっ!」
父「死んじゃったよ……」
私は黙ってしまった。ショックだったのだ。咄嗟にこんなことを言っていた。
「お父さんたちが行ってたら、あたしいなかったね」
ゆっくりと間があり、父は答えた。
「行かなかったから」
その通りだ。父達は、吹雪きを前にして行かない判断をした。
私は地理に疎いが、蔵王の山を山形側から宮城側へぬけるコースというのはどれくらいの距離なのだろうか? しかも雪山が吹雪いていたのだから……。遭難者が出て命をおとしてしまうほど危険だったわけだ。
人生って選択と決断の連続だと感じる50代の私。
父の若いときの選択により、父は生き続け、私は生まれることができたと考えてしまった……
ううーん……、人の命ってひとつひとつが貴重なものだ!と、なんか、しんみりするような、ジーンと感動するような……
父のこの話、57年生きていて、初めて聞いたのです。
実家の家事をあれこれやって、ふと疑問が頭の中を横切りました。
「ねえ、お父さん、さっきの蔵王の話、独身のとき?」
「そうだよ」
そうかぁ。やっぱ、さすが、独身のときかぁ。と思い、いや、待てよ。妻帯してから慎重になる話は聞くけど、ちゃんと独身のときに、吹雪きの中を行ってしまわなかったのは慎重だし、えらかったね、と思いました。
更にーーー
実家をあとにし、自宅に帰ってきてから私は思いついたのです。
あれ? この話、お母さん、知ってたのかな? どうなのかな?
おしゃべりな母のことだから、もし知ってたら、お父さん、結婚する前にこんなことがあったらしいのよ、なんて私に話してた気がするなぁ。
だから、たぶん、知らなかったんじゃないかな。
ということは、もしかして、お父さん、初めて家族に話したんじゃないかな? なんて思った私なのでした。
電話だとなんなので、また実家に帰ったときに父に聞いてみようと思います。
皆さんも、親御さんから若いときの貴重な話、びっくり話を聞いたことありませんか?
今日も読んでいただき、ありがとうございました。
※写真はある日の夕食 厚揚げをくり抜き卵を入れ煮た、味噌汁、漬物
今日の歩数 80歩 (まだ家から出ていない。散歩に行かなきゃ)



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